2015年10月24日土曜日

飛行船型ドローンを作った

飛行船ドローン。写真の人物は私ではないです。

概要


 高専の研究室のメンバーで全長2m程度の飛行船を作成して課題部門に出展した。無事企業賞をいただいた。発案とプロジェクトリーダ、電子ハードウェア、機体制御の開発を担当した。


製作の理由


 講義の一環として研究室で何か作るということになっていてその過程で製作した。課題部門の課題が災害対策ということでブレインストーミングを行ったところ見事私の『火の用心ドローン』が採用され、もう少しまともな感じにプロジェクトをまとめつつ製作を行った。

 最初の案は文字どおり、「火の用心!マッチ一本火事の元!」と大音量で流しながら住宅地を飛び回り地域住民の皆様に火の用心してもらうというものだったが、ネタに走りすぎているのと割と精神的健康を疑われそうなので案に改善を加えた。

 役割としては防災無線(街中にあるスピーカーのようなもの)の電池が切れた状況で、何かしらの通告をして街を回るというものである。通信ができればコントロール用のコンピュータから文字列を受け取り、決めた航路でその文言を喋って回る。

 飛行船は現実的にはかなり厳しいが、飛行船ドローンという概念が珍しかったのかウケた(ちなみに数ヶ月後、パナソニックだったかが屋内用飛行船ドローンを発表していた。課題部門なので屋外非常時向けとしたが、やはり広告業界向けだったのかもしれない)。



苦労したこと


 まず情報が非常に少ない。飛行船ドローン自体が見当たらないのはともかく、小型の飛行船を作ろうということは海外を含めてかなり事例が少なかった。理由はおそらく、ヘリウムが高価であることと気密を保った構造を作るのが難しいからだと思う。

 次に苦労したのは前述の気密を保った気嚢(バルーン)を製作することだった。まず、ヘリウムを逃さないためにアルミ蒸着フィルムを入手するのが難しい。風船屋が随分なサイズのロールを売っているのを見つけそれを買った。そしてそれをアイロンで溶着していくのだがそれもまた難しい。アイロンを当てる時間が長いとフィルムは溶けて穴が開き、当てる時間が短いとうまく溶着せずヘリウム漏れが起こる。つまり、適度のスピードで重ねたフィルムの上をバルーンの線に従いながら溶着する必要がある。完全に職人の技と化していた。「飛行船職人の朝は早い」などと茶化しながら作業した。



技術的な事

 システム構成は単純に機体制御にArduino、通信にXBee、音声合成には専用のICを用いた(この記事はずいぶん後に書いているので型番を覚えていないがどう見てもATmegaだった。秋月電子で購入出来る)。

 見出しに技術などと書いたが、大した技術は載っていない。強いて言うなら劣悪な通信環境下で音声を送信するために音声合成を使っている程度で、調べればいくらでも出てくる話である。



なぜ飛行船か


 一般的にドローンというとクアッドコプターが有名であるが、飛行速度が速すぎるのと、滞空時間が短すぎる、プロペラが高速回転し危険という問題をはらんでいる。飛行機型は滞空時間は長いが同様の危険がある。結果としてのんびり飛行して浮くために電気を使わないので滞空時間も伸ばせる飛行船が最適であると考えた(実際には屋外で風を受けると制御不能に陥る問題が存在する)。



トラブル


 当日会場に辿り着くと尾翼の部品がなかった。どこかで置き忘れたのか真相は闇の中……ともかく、見た目を整えるために寒い夜の街を練り歩き、無事引率教員に怒られた。



最後に


 あれほど苦労したのに画像がほとんど無いのが残念だった。チームの誰もが疲れで謎のテンションの下に作業していたから写真を撮る奴がほぼいなかったんだと思う。

 企業賞は嬉しかった。数の問題があったので多少もめたのと、地元企業の賞だったので会場がざわついたこと以外は問題無かった。

 プロジェクトをまとめることは非常に難しかった。各個人の技能と水準に差があり、性格も影響した。人を扇動することは簡単かもしれないが、人を使うことは本当に難しいと実感した。特に、上司と部下のような明確な立場の差をつけられない場では、口のきき方一つでもチームのやる気に大きく影響することを再認識させられた。